2. 構想設計の手法

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構想設計とは、製品の素性(良い製品・悪い製品)を決める遺伝子(設計図)です。

それでは、設計経験の少ない若手技術者は、どうやって設計という作業を覚えていくのでしょうか? 最初は先輩の描いた図面の修正や部品の手直し、技術資料の修正などをいい付けられて、設計業務の断片的な部分だけを与えられて、目の前の業務をこなしながらも限定された部分の設計を「設計とはどうするものか?」も分からないまま任せられます。

私達が設計を始めた時はドラフターの時代でした。暗中模索の状態で設計していても、要所要所で課長が机にひざを突き合わせ、先輩が設計した内容をチェックしてくれたものです。うしろを通り過ぎるとき現在の進行状況がわかります。そこで問題点の指摘や自身の体験談を聞くことで、担当者が誤った方向に進んでいた設計を、本来のあるべき方向に修正してもらい、さまざまな知識を身に付けていったものです。そう、この会話こそが上司の技術を盗む絶好の場面だったのです。

ところが、近年では開発の短納期化のためにさまざまな開発手法や管理ツールが取り入れられ、さらに関連部門である製造や品質保証、営業、保守部門が開発初期からかかわり、意見をいうようになりました。そのため、課長:部長は経営陣に対して納期遅れがないか逐一報告をし、他部門からの要求に回答・調整しなければならず自身の業務で手いっぱいの状態になっています。

また短納期化によって、設計担当者自身も精神的な余裕がなくなり、製品仕様や品質基準、製品開発の背景や目的など理解せずに、与えられたスペースに必要機能を盛り込むだけの「詰め込み設計」に陥りがちです。ある程度設計が進んだ後で、これらの設計基本要素に準じているかを確認しても、もう手遅れです。

学生の時、機械要素設計が必修科目で構想のレポートを教授が認可して、それを図面化する授業がありましたが、このレポートが難関で夏休みも返上した思い出があります。

構想設計とは、製品の素性(良い製品・悪い製品)を決める遺伝子(設計図)です。

この<遺伝子(DNA)>をS:Q:C:D:S:E で設計基本要素の検討をもとに、気付いた事をノートに列挙しましょう。それを要素別に分類します。Delight(魅力ある製品)構想も必要です。 機能検証あるいは構造検証はポンチ絵を推奨します。これは立派な技術構想書です。手書きの資料はCADで検討するより短期間で作成でき、かつ機動的でコスト把握もできます。立体イメージがあるので設計部門以外の担当者でも理解しやすく、デザインレビューではより建設的な意見が出ることも期待されます。それらを、発表させてもらう機会を得るのです。他の部署からの修正案も盛り込み構想報告書を作り順次修正を行います。

これが<可視化>です。

この場合、反応と速度が重要で<昨日の新聞記事>になっては、相手からソッポをむかれますよ!!

そして、設計作業の先に何が待ち構えているかを知ることです。 構想段階で、ある程度スペースのことも考慮をしてアイデアを検討しますが、あくまでも理想を追いかけた姿にすぎません。与えられたスペースの中で、隣り合うユニットとの関係や組み立て性、メンテナンス性を実現させようとするとさまざまな制約があります。 構想段階ではラフな検討で良かった1つ1つの部品に対して、コストや機能が出るように、また加工も考慮して形状を決めていく必要があります。実際のスペースに入らずに構造変更が必要となります。

設計初期段階で関連部門の要求を事前に設計に盛り込むよう関連部門が設計段階まで入り込み、スムーズな生産移行を目指す「フロントローディング型開発」が現在の開発スタイルの主流です。この活動によって手戻りを極限まで減少させて開発期間の短縮化、経費削減などの開発の効率化を狙うものです。フロントローディング型開発では、関連部門からさまざまな要求事項が設計に提起されてきます。これを整理して、対応の可否判断と、対応できない場合の代替方法を検討しなければいけません。そのため、従来の設計部主導の設計方法から比べると設計者に大きな負担が掛かるため、いかに設計の負荷を増やさずにプロジェクトチームとしてフォロー体制を組めるかがフロントローディング型開発の成功のポイントになります。

そこで、設計ツールの登場です。 CADは、入力した数値に対して忠実な寸法で線を描いてくれるため、累積した寸法の計算間違いなどが発生しません。これによって、設計部門以外の技術者やトレーサーでも、部品図から寸法を把握することができるようになりました。 現在では、特別な理由がない限り手描きで図面を描くことはなくなり、2次元CADを使って図面を描くことが一般的です。また現在では3次元CADが普及し、そこから2次元図面に展開あるいは3次元CAD上に寸法を指示しています。

「CAD」(Computer Aided Design)とは、コンピュータを用いて工業製品などの設計を行うシステムのことで、「コンピュータ支援設計」と和訳されます。ワープロと同様に、CADは手描きと比べて簡単に線を作成・消去、あるいは移動・コピーできることが最大の特長です。

私は、運良く30年前に<CADAM>を操作させて頂きました。魔法のじゅうたんに乗って設計している気分になりました。手描きの場合、方眼紙という有限のスペースの中に、最初に基準線あるいは中心線を描き、そこからイメージした形状を具現化していきます。一度描いた線を消すという作業は、大変な労力を必要とし、関係のない隣接する線まで消してしまう恐れがあり、描き直す作業は精神的にも大きな負担でした。しかし、紙にバランスよく配置したいのに基準線(中心線)の位置を誤って、何度も消しゴムで消したり新しい紙に取り換えたりする無駄な作業の中で意味を持った線(命のある線)を描く能力が自然と身に付きました。

現在は、設計の軽薄短小を狙ったコンパクト設計が求められるようになり限られたスペースの中に厳密に機構をレイアウトするにはCADが欠かせません。ところが、CADは万能ではありません。CADが勝手に設計してくれるわけではなく、設計者自身がCADを操らないといけないのです。そう、CADは単なるツールということを認識し使いこなすことに留意すべきなのです。

では、2次元CADを考えてみましょう