解析結果の評価

FEM構造解析評価

解析が終了したら、結果を表示して正しく解析が実行されたかチェックします。
変位の値が手計算の値と、かけ離れていたり想定外の変形が見つかった場合は

• 材料設定は間違っていないか?
機械的性質を確認:縦弾性係数:ポアソン比:せん断弾性係数:降伏強さ:引張強さ・・・・・etcを
マニュアルで変更する(安全率も配慮)

• 単位系は間違っていないか?
デフォルトの基準単位を確認する。

• 拘束条件は間違っていないか?
物体を固定する場合、固定部は変位はゼロとなり、同時に特異点となります。
拘束された断面は全く変形しませんが、実際は変形します。

• 荷重の方向と力は間違っていないか?
方向は、面に対して垂直(水平)に掛かります。X:Y:Z面:YZ:XZ:XY面の確認。
一点集中荷重を負荷した点は応力が無限大となるため特異点となります。

上記の設定ミスがあった可能性があります。設定条件を修正します。

代表的な評価方法
応力解析では、「変位」 の結果を先に確認します。
下図のように同じ変位の結果を同色で表示させた図のことです。

結果を解析結果として表示させて、変形の方向を確認します。
応力が集中している部位は、一般的に赤く表示されます。

応力集中部のメッシュは粗くなっていなかったか確認します。解析の結果に最も影響を及ぼす要因は、「メッシュ」です。特に応力が集中した部分はメッシュを細かくして、結果の精度を高めて確認する必要があります。

応力について

実測値と比較する場合、主に以下の3つの方法があります。
(1)『ひずみ応力』を参照する方法
(2)『主応力』を参照する方法
(3)『ミーゼス応力』を参照する方法
(1)>(2)>(3)の順で実験値との比較する方法が妥当な方法と言えます。しかし、この順では、長時間の労力を必要とします。したがって、時間短縮の観点から(2)や(3)の方法を用いる場合もあります。

それぞれの応力の特徴、解析対象の応力状態を踏まえる必要があります。

(1)ひずみ応力を参照する方法

最も妥当な方法です。しかし、ポストプロセッサ上でこの応力を参照する場合、計測ポイントごとに座標系を変更し、ひずみ応力を向いた成分応力を抽出する必要があるため非常に煩雑です。ひずみ応力がグローバル座標のxyzのどれかの方向に向いていればまだ良いですが、対象が複雑な形状をしている場合、計測ポイントごとに、ひずみ応力を向いた座標系を定義する必要があります。したがって座標系を一つ一つ定義する労力と、応力参照時には座標系を切り替える労力を必要とします。

(2)主応力を参照する方法

ひずみ応力の方向が主応力に一致していることが前提となります。これまでの経験で主応力にピタリと合わせられる方もおりますが、製品形状によっては、方向を合わせるのは困難な場合もあります。そのような場合、精度が悪くなります。
労力としては、最大主応力と最小主応力を切り替えるだけなので、(1)ほどではありません。ただし、主応力ベクトルもしっかり確認しておかないと、ゲージの向きと90°傾いた方向を参照している場合があるので注意が必要です。

(3)ミーゼス応力を参照する方法

ミーゼス応力は全ての方向の応力を加味した評価方法なので、ひずみ応力などの単軸の応力と比較するのは妥当とは言えません。しかし、ミーゼス応力という一つの参照方法で評価できるため、他の方法に比べれば非常に簡単です。
ミーゼス応力で参照しても、近似的には問題がない状況というのがあります。それには次の条件を満たす必要があります。
まず、主応力とひずみ応力が一致していること、さらにせん断やねじりなどの負荷が加わらないような部位であること。このような状況ではひずみ応力とミーゼス応力が一致します。もちろんミーゼス応力は正値しかありませんので、比較する実測値の方も絶対値を取る必要があります。板金ものなどでねじれなどが加わらない負荷状況であれば、概ねミーゼス応力で問題はないと考えます。
基本的には(1)の方法を採用すべきですが、上記のような条件がそろえば簡易的に主応力やミーゼス応力を参照する方法も良いと考えます。応力の意味や対象に加わる負荷状況、その応力分布などを理解し、実測値との照合作業にかけられる工数、要求される精度などを踏まえて適切な方法を選択すべきです。

応力解析では 変位 と 応力 の結果が出力されます。変位は製品の機能を損なわない範囲にあるか確認します。応力は、許容応力以下となっているか、また弾性範囲に収まっているか確認します。弾性範囲に収まっていれば、荷重を取り除くと元の形状に戻ります。

材料の強度を調べる試験は、1軸方向に引っ張ったとき、どのくらいの力で降伏や破断が発生するのか調べます。応力を1軸に置き換えて単純化する必要があります。

現場の設計者としては、

•<剛性の指標>として変位を評価するには?
変位を何mm以下に抑えれば十分な剛性といえるのか?

•<強度の指標>として応力を評価するには?
応力をどの程度に抑えれば目標の疲労強度を満足するのか?
を、考えます。

設計目標がはっきりしていて、その判断方法が決まっていれば比較的簡単ですが、剛性評価のように主観で判断する場合、荷重条件や拘束条件等の境界条件が理解できず、絶対的な値の予測が難しい場合があります。
そのような場合、実績のある現行機種との比較でどうなのか?、あるいは他社の製品と比較してどうなのか?・・・のように比較できる対象の解析モデルも同時に作成して比較評価する手法があります。これは有効な策で、解析モデルを複数作る必要があるので労力がかかりますが、比較判断と問題点の解決方法も見つけ出すことが可能となります。
現在、各社ともFEM解析結果で絶対評価ができるように、専門分野を設置して、多くの実験と、その検証を繰り返しながら、技術構築している現状です。

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